清家農園みかん山通信(73号)平成21年3月号
テクテク歩いてみかん山から帰ってくる途中、鶯がとても上手に啼いていました。するとすかさずすぐ近くから別の鳴声が聞こえてきました。間髪を入れずに大胆にも間近で啼くにはちょっとお粗末な完成度の低い若い声でした。少し離れたところからも鳴声が聞こえました。まぁまぁの出来でした。鶯の鳴声は縄張りの主張と求愛なのだそうですが、果敢にもベテランに挑戦した二番手の若い鶯に、私は拍手を送ってやりたくなりました。何故なら、挑戦的で怖いもの知らずの若さを羨ましく思ったからです。初鳴きを聞いた二週間ほど前にはまだ鳴声も弱々しく遠慮がちだったのですが、昨日の鶯の競演は間違いなく春がすぐそこまで来ていると告げていました。受験真っ只中や就職が決まってない方、リストラされた方などはまだ春の気分どころではなく酷寒の吹雪の中に立っている様な気持ちかもしれません。でも先程の鶯のように、第三者から見るとどう見ても分が悪く勝てそうにない相手にも全身全霊でぶつかってゆく必死の勇気ほど可能性に満ちたものは無いと私は思っています。勿論、日ごろの努力無しで闇雲に突撃すればいいというわけではありませんが。鶯だって毎日「ホケホケうーんホーホへヒョじゃなくてホーホキョキョじゃなくてホーホケキョ!やったぜー!!」という具合に飽かず練習しています。「私も鶯ぐらい努力していたらもうちょっと何とかなっていたのになぁ」と思うほどです。忙しない毎日をせかせかと送っている私は「いつになったらゆったりと暮らせる様になるのかなぁ」と言う思いと「限られた人生なのだから少しでも世の中の役に立ちたい」と言う思いの間で行ったり来たりしながら暮らしています。鶯はそんな私に、「焦る必要も無いけどまだ後ろ向きになるのは早いんじゃないの?」と歌ってくれているのかもしれません。脳の衰えを痛切に感じつつ(生まれつきやないか!と善一の弁)今年も矢張り七転八倒でやっと青色申告を提出しました。「どげんかせんといけん」状態の家の中を「片付けないといけん」と痛切に思いつつみかん山通信を書いております。
「いつ来るの?」長男からの電話です。電話口でチューリップの歌?らしき可愛い声を聞かせてくれる山口県の孫に会いに行く計画を立てています。長男もこちらも忙しく、なかなかスケジュールが合わないのです。月半ばには福島県二本松での訓練を終えて次男が戻ってきます。多分帰宅して十日後ぐらいに青年海外協力隊員としてマラウィに発つのでしょうが、旅行鞄のコロが壊れた侭なのに修理にも出しておらず、間に合うのかと心配しています。貧乏な彼は携帯電話も持っていないので連絡の仕様がないのです。埼玉の亡母の十三回忌もすぐそこです。「やすこちゃん、やすこちゃん」と私を呼び、子供達をいつもやさしく見守ってくださり、亡父母を「ちゃんと守るから任せなさい」と檀家にしてくださった近所の和尚様が亡くなられました。寂しくなりましたが、陽気な和尚様のこと、今頃天上で、和尚様にお世話になった人々と楽しく談笑されていることでしょう。何やかやと三月もまたてんやわんやの忙しい月となりそうです。
忙中閑あり物干し台の梅見かな