清家農園みかん山通信(114号)平成28年3月号
物干し台から見える向かいのみかん山、荒らしている(耕作放棄)らしい斜面は、辛子菜の菜の花の黄色で明るく春色に染まっています。我が家の七色畑も菜っ葉は皆菜の花になりました。うぐいすも初鳴きを始め、伸び放題の梅の木は満開の花を咲かせ、数十羽の目白が蜜を吸いに来ています。小鳥たちが飛び立つ度に枝が揺れると花びらがちらりほらりと舞っています。三寒四温とは今頃の季節を指す的を射た言葉と思っていましたが、どうも冬の気候の言葉のようです。青色申告の提出が終り、数字との格闘の呻吟から開放されホッとした夕方、時間の贅沢をしようと春を探しにダム湖の周りをウオーキングしました。北の国へ旅立つ日がそろそろ近いので集結したのか、ダム湖の鴨がいつもより増えていました。湖畔の道をゆくと驚いた鴨たちが一斉に飛び立ちダム湖の上を旋回してすぐに湖面に降り立ちました。今年生まれた雛かまだ幼そうな小鴨が一生懸命湖面を泳いだり、飛んでみたりしています。いたいけなこの子たちもおとなの鴨について遠く何千キロも旅をするのだろうかと思いながら鴨たちを眺めてしまいました。人間世界のように旅立ちが出来ない鴨もいるのでしょうか。歳をとった鴨は旅の途中で力尽きて海に墜ちてゆくのでしょうか。いずれにしても人間に比べれば自然に逆らわない潔い人生(鳥生)なのだろうなと考えつつ、イノシシよけの棒を振り回しながら歩きました。夜テレビが、難民高等弁務官事務所=UNHCR(二十数年前、ボスニアやルワンダ紛争の頃UNHCRのトップとして活躍し、現在の難民支援の基礎を築き、後に青年海外協力隊の局長もされた緒方貞子さんの、学者としての頭脳明晰さと並外れた決断力と行動力に、震えるほど感動し年甲斐もなく憧れ続けています。)で難民の為に働く日本人の女性達をルポしていました。彼女たちは膨大な数の難民を前に無力感に打ちのめされながらも、日々出来うる限りの活動を真摯に行っていました。人間の環境破壊で狭められているとはいえ鴨には迎えてくれる大地が有るのに、難民は祖国に留まることも出来ず、迎え入れてくれる国も定かではないんだなぁと、思いました。私にできることは会費を納めることぐらいで、アリの一運びにもなりませんが、できるだけ周りの人たちにUNHCRの宣伝をするようにしています。鴨の数千キロの旅は自然の摂理に従った行動ですが、数百万の難民のあてどの無い旅は、人間の愚かな行為の結果です。ただ一生懸命生きている鳥や動物たちに比べ、生きとし生けるものの頂点に立っていると思い込んでいる人間のなんと愚かなことか。その人間のひとりとして恥じ入るばかりです。
3月は年度末、高校や国立大の入試、そして卒業式、転勤の辞令と新しい生活が始まるきっかけの月ですね。今は、不安で押しつぶされそうな真只中かもしれませんが4月からは心機一転、希望の春にしたいものです。我が清家農園もいつまで今の状態が保てるかと思案する日も多々有りますけれど、流れるところに流れてゆくと思えば、少し気が楽になります。もうすぐ3月11日。希望を持とうにも持てないで苦しんでいる方も沢山いらっしゃると思うと心が痛みますが、どうぞ今日より明日が良い日でありますようにと祈っています。お気楽な話で済みませんが私も夜な夜な婦人会の総会の資料作りに励むことに致しましょう。
3月は はるみ せとか ハルカが最盛期です。デコポンと清見はみかん山で4月の出番を待っています。
ジュースのご予約も承っています。
鳥帰る難民祖国後にして